私の母の話
家族とは,ふだんは鬱陶しいもので,でも簡単になくならないものだ。
特に母はいつでも私のことを全面的に応援してくれる。
そんな母が最近は物忘れも多くなった。いつか,認知症になるのではないか。
私はそんな不安を感じ始めている。そして,別れを想像しながら,そんな母との思い出を書き残しておこうと思った。
地方に下宿しているのだが,実家が近いので片道1時間くらいかけて,母がやってくる。とくに,することはないので,たいがい,一緒にご飯を食べるか温泉へいくかのどちらかだ。
前日に母から電話があり,出てみると「あした,そうじにいくわ」と。
私は,面倒だったが,仕方なく受け入れた。
当日,姉もやってきた。母は姉といると,服装もおしゃれになる。おしゃれといっても,私からすると,変なおしゃれだ。頭に赤い色のターバンを巻き,パンツは水色のものだった。私が「なんちゅうカッコウや」というと,「掃除のカッコウや」と。
なぜかはわからないし,本人も無意識ではあるというが,姉の言うことは何でも聞き入れ,私の意見は全く響かない。
そんな母は部屋中をきれいにして帰って行った。とても満足そうに。
そして「また,近いうちくるわ」と。
やっぱり,長い間主婦をやってるだけあって,掃除は自分にできないこともできる。
別れ際,買い物いくかといわれたが断った。
そんな母の背中は,さびしそうに見えた。
大切なことは後から気づくことが多いが,私も後から母の大きさに気づくのだろうか。